STOP!児童養護施設内虐待

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児童虐待の定義および解釈


概念
   虐待、abuse、maltreatment
英語には児童虐待を指す用語が二つある。「abuse(アビュース)」および「maltreatment(マルトリートメント)」である。二つとも日本では「虐待」と訳されるが、意味している内容は違う。虐待の概念を理解するために、これらの言葉について記述する。

「abuse」は、日本語の「虐待」に近い意味を持つ。日本における「虐待」という言葉の元来の意味は、「むごい扱いをする」で、積極的・意図的な加害行為を連想させる。英語の「abuse」はもう少し範囲が広い。(子どもの)乱用という意味であり、大人の希望や欲望のために、子どもを利用・搾取することをいう。やはり比較的意図的・積極的な加害行為を指す。

「maltreatment」とは、大人に依存しケアされなければ生き、成長していくことのできない子どもに対する「不適切な関わり」を意味する(不適切では弱いと「非道処遇」と訳す訳者もいる)。

「abuse」が身体的虐待・性的虐待に対しよく使われるのに対し、「maltreatment」は身体的・性的・心理的(情緒・精神的)虐待およびネグレクト(養育怠慢・無視放置)など、子どもに対する全ての虐待に対してよく使われている。

児童虐待の分類

児童虐待の定義 児童福祉法第4条に規定する「満18歳に満たない者」、0〜17歳を児童という。
親、または、親に代わる保護者により、非偶発的に(単なる事故ではない、故意を含む)、児童に加えられた以下の行為を児童虐待という。
1.身体的虐待
2.性的虐待
3.ネグレクト
4.心理的(情緒的・精神的)虐待

定義の運用にあたっては
一種類以上の虐待が重複して行われることが多いこと、また

i)行為そのものよりも、その動機に焦点をあてること。
ii)暴行全般への態度、そして、声なき集団としての子どもたちに対する態度を、現実的に評定すること。
iii)子どもにあたえた身体的、精神的結果の有害度

を考慮すべきである。
   身体的虐待 身体的虐待
18歳未満の子どもが、その子どもの福祉に責任のある人から受けた身体的外傷であり、それによって子どもの健康や福祉が傷つけられたり脅かされたりする状態
("The Child Abuse Prevention,Adoption,and Family Service Act of 1988")

外傷の残る暴行あるいは生命の危険のある暴行。
外傷としては、打撲傷、あざ(内出血)、骨折、頭部外傷、刺傷、火傷など。
生命に危険のある暴行とは、首を絞める、布団蒸しにする、溺れさせる、逆さ吊りにする、毒物を飲ませる、食事を与えない、冬に戸外に締め出す、―室に拘禁する、など。

児童虐待調査研究会(1985年)

身体的虐待は、性的虐待を除くすべての直接的な身体的暴力を指す。児童養護施設においてはしばしば食事を与えない罰が行われるが、これも身体的虐待である。定義によっては他者による暴力から子どもを守らなかった場合も、身体的虐待に含むものもある。

   性的虐待 性的虐待
 ある年齢までの間に当事者が成人ないし年上の他人(親や同胞を含む)にされた性的な行為で、当事者がその行為を強制されたもの、望まないもの、嫌悪感の湧く怖い事と感じた場合をいう。
 その行為には接触的なものと、非接触的なものとがあり、接触的なものには当事者の身体への性器の侵入を伴うもの(上記他人によるペニスの挿入や接触、当事者の性器を加害者の口、性器などの体孔に導くこと、など)と当事者の胸、性器周辺、肛門への愛撫が含まれる。非接触的なものには上記他人による露出癖的行為、他人が当事者を児童ポルノグラフィに巻き込むこと、他人が行う性的行為に当事者を巻き込むこと、などが含まれる。
 上記他人は家族の者(親、兄、祖父母、それ以外の親族、義父母、養父母、義理の同胞、など)である場合も、血のつながりや親族関係のない家族外の人物の場合もあり、前者を家族内性的虐待、後者を家族外性的虐待という。
 当事者の年齢については家族内性的虐待では18歳未満、家族外性的虐待では原則として14歳未満とし、強姦ないし強姦未遂については18歳未満とする。

重度 内容
I 膣、口腔、肛門内への挿入、クリニングス、アナリングスなどの既遂ないし未遂、強制的である場合もない場合も含む
II ・性器への愛撫、擬似性交、手指挿入などの既遂ないし未遂、強制的である場合もない場合も含む
・母をレイプしているところをみせつける
III ・臀部、もも、脚あるいは他の身体的部位への意図的な性的タッチ、衣服の上からの胸、性器への接吻の既遂ないし未遂、強制的である場合もない場合も含む
IV ・入浴中の娘を覗く、視姦、性器を見せる
・卑猥な言葉をかける
・トイレのドアを開けるなど、接触を含まないセクシュアリテイに侵入する行為
V ・性的虐待の可能性(回想不能)
「児童期性的虐待の研究と治療に関する日本の現状」斉藤学(2000)

児童養護施設における性的虐待は、家族外性的虐待ではなく、家族内性的虐待の基準に含めるべきであろう。なぜならば、子どもを直接的に保護・養育すべき責任にある者が子どもに性的虐待を加えた場合、直接的には責任を負わない第三者が加えるよりもさらに、子どもの恐怖と混乱は増すからである。子どもが生活をする「家」で「誰よりも保護してくれるはずの養育者」から性的虐待を加えられるという観点では、実親子間あるいは義理の親子間と比べてもなんら変わりはない。

   ネグレクト ネグレクト
1.身体的ネグレクト
 身体的ケアの拒否や遅れ、放置、家からの追放、他の親権問題、不適切な監護、
 その他
2.教育的ネグレクト
 長期の怠学を許可する、学校に行かせない、子どもに必要な特殊教育を受けさせない
3.情緒的ネグレクト
 子どもにとって必要な情緒的ケアを与えない、長期で著名な夫婦喧嘩を目撃させる、
 子どもの薬物やアルコール乱用を放置する

US department of Health and Human Service(1988)

病気の子どもの放置、たばこやアルコールなどに関して職員が何も注意せず、子ども達に必要な道徳的教育を施さないのは、ネグレクトにあたる。児童養護施設では、ネグレクトが起こらないよう十分に注意し、職員に教育を施すべきであろう。

   心理的(情緒的・精神的)虐待 心理的(情緒的・精神的)虐待
養育者により加えられた行為により、極端な心理的外傷を受け、児童に不安・脅え、うつ状態、凍りつくような無感動や無反応、強い攻撃性、習慣異常等の日常生活に支障をきたす精神状態が生じた状態で、以下の要件を満たすもの。
1)身体的暴行による虐待、養育の放棄・拒否による虐待、性的暴行による虐待を含まない
2)児童の行動と養育者の行動との関連が確証できる虐待
大阪府児童虐待調査研究会(1988)

心理的虐待は子どもの情緒的な情緒的な発達を阻害し、心理的に傷つけ、人間性や存在価値を否定するような言動を指す。直接的な加害意図がなく、無意識的に行われることも多い虐待でもあり、子どもの養育にあたる職員の子どもへの意識の低さが、さまざまな局面で子どもを心理的に虐待する。心理的虐待は、七つに分類することができる。
無視ignoring 子どもにとって必要な心理的な刺激や反応を与えないこと
拒否rejecting 子どもを心理的に拒否し、その価値を否定すること
孤立させるisolating 家族の内外で子どもと他者の関係を断ち切ること
恐怖を与えるterrorizing 子どもを脅すなどして恐怖を与えること
腐敗させるcorrupting 反社会的行為の強要などで子どもを腐敗させること
言葉の暴力verball assaulting 子どもの自尊心を傷つける言葉の暴力
過度の圧迫overpressuring 子どもに過度の発達を押しつけること

この分類に従えば、「嫌なら出ていけば?」という言葉は拒否にあたり、明もしくは暗黙のルールで友達を施設に招けないのは孤立させるにあたる。子ども同士を対立させるのもまた、孤立させるに当たる。「お前達は親に捨てられたんだ」は言葉の暴力であり、小さな子どもに自分自身の面倒をまかなわせるのは過度の圧迫にあたるであろう。

虐待による発達の障害
ネグレクト 身体的虐待 性的虐待 心理的虐待
発達への影響 ・愛着関係の欠乏、歪み
・基本的信頼の欠乏
・受容されている感覚の欠乏
・万能感の欠乏
・発達刺激の欠乏
・構造の欠乏、歪み
・外傷体験
・信頼感の低下
・罪悪感による自尊感情の欠乏
・愛情と暴力の混同
・暴力による解決方法の学習
・外傷体験
・愛情と性の混同
・受容できない現実
・秘密を守る負担
・「汚い」という自己認識
・身体への過度の関心
・自己否定感
・外傷体験
・信頼感の欠乏
・善悪の混乱

 神
 症
 状
精神活動の低下
 精神発達の遅れ
 感情の極端な抑圧
 抑うつ


自己感の発達の障害
 身体感(リズム・食欲
 など)の障害
 自己境界感覚の障害
 自己の連続性の障害
 自己の主体性の障害
 自尊感情の障害
 偽成熟
 自己刺激行動

自己調整能力の障害
 易興奮性
 極端な頑固さ
 多 動
 衝動性
 暴 力
 自傷行為

刺激防御能力の障害
 自己治癒能力の低下
 易刺激性


満足感の障害
 過食、早食い、隠れ食い、
 盗み、万引きなど


他者関係能力の障害
 無差別的愛着
 希求と回避の混在
 共感性の低下
外傷による障害
 記憶の問題
  記憶の侵入
  記憶の抑圧など

 生理的防御
  睡眠障害
  過度の警戒
  易刺激性など

 心理的防御
  精神活動の低下
  抑圧
  孤立化
  解離
  二分化など


虐待者への同一化
 自傷行為
 自殺願望
 幻聴


自己調整能力の低下
 (ネグレクト参照)

抑うつ感情
 楽しむ能力の低下
 学習能力の低下


無力感

行為への障害
 弱いものへの暴力
 反社会的行為
外傷による障害
 (同左)

抑うつ
 (同左)

自尊感情の低下
 (自分を)汚いと思う
 無力と思う

ファンタジー傾向
 白昼夢
 虚言

身体化障害

性行動の障害
 過度の性行動
 性的誘惑
 性的関係への
  過度の不安
 異性への希求と回避
自尊感情の障害
 抑うつ
 自己破壊行動
 学習の問題


その他自己感の障害
 (ネグレクト参照)

他者関係の障害
 孤立傾向
 他者への希求と回避


外傷による障害
 (同左)

自己調整能力の障害
 (ネグレクト参照)









参考文献 児童虐待各論(臨床精神医学講座S6 外傷後ストレス障害(PTSD))/奥山眞紀子(2000)
児童期性的虐待の研究と治療に関する日本の現状/斉藤学(2000)
解離 若年期における病理と治療/Frank W.Putnam(1997)

大人の子どもへの不適切な関わり(child maltreatment)./高橋重宏(1996)
大阪府児童虐待調査研究会(1988)

US department of Health and Human Service(1988)
The Child Abuse Prevention,Adoption,and Family Service Act of 1988
児童虐待調査研究会(1985年)
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